会員から アーカイブ

2018年7月30日掲載

暑中お見舞い申し上げます

日本ウエルエージング協会代表理事 安部雍子


この夏は、本当に暑い。酷暑という言葉そのものの毎日の中、皆様いかがお過ごしですか? これからは毎月10日に、会長からの新しいメッセージをお届けする事に致します。

どうぞ、笑いながら眼をお通し下さい。暑い夏には一服の涼、寒い冬にはひと時の暖にでもなれば、と。

歳をとると、物忘れの度合いが増えるというのは周知の事実ですが、思わず笑い出してしまうようなお話が、ゴロゴロしております。

お買いものを終え、自宅に向かって歩き始めたAさん。突然鳴りだしたバッグの中の携帯は、友人のBさんからの長電話でした。

「もしもし、あ、あたし。今何してるの?」…に始まり、お話は延々と続きます。足腰に自信が無くなっていく高齢者にとって、今や携帯は、それは大事なコミュニケーション・ツール。身辺雑話、よもやま話あれこれとAさんはBさんとの会話を続けながら10分程の時間をかけて自宅にたどり着きました。

電話はまだ延々と続いています。

「うんうん、あらそう! へぇぇー…」と応答しながらA夫人、鍵を取りだし、玄関のドアを開けると、いつもの習慣で次々と荷物を処理していきます。物忘れをしない様に、と、身辺の道具の起き場所をきちんと決めているからです。

先ず玄関の鍵を内側から確りと掛け、脱いだ靴を靴箱にしまい、重い荷物を食料品は冷蔵庫に、そしてその他は然るべき所に置き、ヤレヤレ。さて携帯を所定の位置に置いて…と。ところが携帯電話が見つからないじゃありませんか。しきりと荷物の中をゴソゴソ…。しかし、どこを探しても携帯が見つかりません。

「もしもし、私どうやら携帯を何処かに置き忘れて来てしまったみたい。探しても無いのよね、何処か途中で落としてきたのかもしれない・・。ちょっともう一度外を探してみてくる!」。話し相手のBさんも「まあ大変!それは探さなくっちゃ!」と。

そこでA夫人、もう一度鍵を外し、鍵を閉め、炎天下の外を探し回る事になったのです。

「途中の道には何も落ちていないのよね...」(A夫人)、

「も少し先まで行ってみれば?」(B夫人)

「そうね、あの角まで行ってみて、なかったら警察に届けるしかないわね・・」(A夫人)

賢明な皆さんならもうおわかりの事と思いますが、以上は全て携帯を耳にしながらの会話です。今現在おしゃべりしている携帯の事を、お二人ともケロっと忘れていたというわけです。既に始まっている高齢社会では、こうした話が今後もあちこちに…。でも、無理に頑張るより、失敗したらアハハと笑い飛ばす、咎めだてするよりも笑いの絶えない社会の方が良いのではないか?と考えるのですが、皆さん、どうお考えでしょうか?

2018年3月22日掲載

第二期ウエルエージング時代の価値形成

日本ウエルエージング協会理事・事務局 加藤 夕紀子

日本で唯一のインスタント・シニア(高齢者擬似体験プログラム)運営団体

インスタント・シニア事業の運営を、長年、ウエルエージング総合研究所に委託してまいりましたが、本年3月31日でその契約を解除することになりました。それに伴い、4月1日から本協会インスタント・シニア事業部フォーラム事務局ですべての運営を務めることになりました。今後一層皆さまのお役に立てていただくべく事業の発展に努めてまいりますので、引き続きご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。理事一同、インストラクターの認定資格を取り、この高齢社会での問題発掘、解決のお手伝いをさせていただく所存でございます。

1953年に現在の高齢社会を予測する中で協会を設立。高齢社会に向けて街や施設、商品づくり、人々の意識の改革への啓蒙を進める中で、1992年、日本で初めてカナダのオンタリオ州政府との独占契約によりライセンスを与えられ、高齢者擬似体験プログラム「インスタント・シニア」を実施する唯一の団体になりました。そのプログラムがまず使われたのが、日本の空の玄関である成田国際空港でした。そしてその後も、街にはノンステップバスも走るようになるなど、多くの貢献をしてまいりました。

第二期ウエルエージング時代の到来

第一期ウエルエージングの時代は、寿命の伸長により、定年後の生活をどう生きるかが問われ、人生を「長さ」ではなく、いかに生きるかの「質」で捉える価値観の転換が促されました。“高齢者による高齢者のための”活動でした。

現在、平均寿命が女性87歳、男性81歳の超高齢社会を迎え、団塊の世代の後期高齢者への参加を控えて、人々のウエルエージングへの概念も変わって来ました。第二期ウエルエージングの時代の到来です。

医療と社会保険の充実、食生活の向上により元気な高齢者が増えました。2017年1月には、日本老年学会から、高齢者を現在の65歳から75歳へ、という提言が出されました。就労人口としての若年層の減少から、70歳までは元気に働く、という社会的要請が出て来ました。

片や、老親の介護の問題、老々介護の問題が、暮らしの場を深刻にしています。高齢層の医療費、介護費の増大が歯止めのきかないものとして、国の経済を揺るがすものとなっています。高齢化は、いまや高齢層の問題ではなく、すべての人々の問題、社会の問題になりました。

今、人々の中にあるウエルエージングは「生涯元気に生きて、人の手を煩わせることなく、自立して生ききること」

生活現場のそうした問題とともに、働く場においても、利用者、お客様の多くは高齢者である現実の中で、そのことへの理解と視点が求められています。今後労働人口に高齢者が参入して来ることにより、労働環境も変わって来ます。

高齢者の身体的、心理的変化への理解に向けて、インスタント・シニアのプログラムの活用にも、新しい分野が拓けて来ました。

成熟社会に求められる価値

高齢社会は成熟社会です。

付加価値の名のもとに、間違ったCS(顧客満足)の時代に頭の中で考えられた、要らないものが沢山出来て来ました。食品の包装材一つ考えても、そのためのゴミの問題が地球規模での問題になっています。

成熟社会は基本価値が大事にされる時代です。本物が育つ時代です。

ネガティブに語られることの多い長寿化・少子化の人口減少社会ですが、長きにわたり高齢問題に取り組んできた本協会は、それを深く見極める中で、そこに見出されるプラスの価値、今後の社会に育てられるもの、に光をあてて社会に投げかけ、皆さまと共に育てていきたいと考えております。

2017年11月21日掲載

ようこそ、日本ウエルエージング協会のホームページへ!!

日本ウエルエージング協会会長 安部 雍子

超高齢社会に求められる新たな視点

吉田寿三郎先生が始められた日本ウエルエージング協会の長い歴史については、今更申し上げるまでもないことですが、現在既に私たちが我が国日本の超高齢・少子時代に入っていることはご承知の通りです。

世の中には様々な統計調査資料がありますが、一番信用できる数量調査といえば、それは人口統計資料でありましょう。そこに描かれる世界は、とうの昔に今日の状況をはっきりと示しておりました。今更騒ぎ立てるのも実は恥ずかしいようなことでありますけれども、人間というものは実際その場にぶつからなければ納得しないものなのでしょう。本来政治というものはきちんとそれを読んで早くから施政されなければならないものでありますけれども、残念ながらその直前に至って初めて動き始める、というのが現状です。

少子高齢時代と言われて私たちが想い描くのは(偉い先生方を含めて)、どこを向いても爺さん婆さんばかりの不活性な沈滞した社会の姿のようですが、それにあえて挑戦したい!と私は考えます。といっても若作りで皺だらけの気持ち悪いジジババの輩出、という事ではなくもう少し別の視点を探そう、という事なのです。

新企画 「テーマ付き井戸端会議」のご提案

最近、私は面白い一冊の本に出合いました。1965年生まれの山口ミルコさんが書かれた「似合わない服」(ミシマ社・1,620円)という本です。文字通りバブル期の青春を、ピンクのジャージと真っ白なベンツで謳歌した世代の一人の女性が、癌になったことを契機に、便利さと豊かさに彩られた色鮮やかな生活から、地に足を付けた健康で静かな生活へと徐々に転換していく、その実態を通して「癌=バブル=資本主義?」という仮説を立てていくのです。

そこで、新しい企画として皆さんとともに新しい形の読書会(野次馬読書会とでも言いましょうか、テーマ付き井戸端会議とでも言いましょうか)を始めたいと思います。第1回は、この「似合わない服」を取り上げ、3ヵ月に1回くらいの頻度で、テーマとなる本を提案し(自薦・他薦可)それについて自由に語り合う機会を持つこと、それにより、皆様のお考えを話し合い、考え合い、モノによっては社会に発表し、政治家にぶつけていく、そこまで行ければこの会の存在意義もあろうかと、そんな風に考えております。大変読みやすい本ですから、読書苦手という方にもとっつきやすいと思いますが、もし余力があれば、小池百合子さんと都知事選で戦い、敗れた増田寛也氏の「地方消滅」及び「東京消滅」(ともに中公新書 ・820円、760円)もご併読いただければ、と・・・。

なお、ここでは高邁な議論などは期待いたしません。日常感覚で問題点を突っつき出していく、という、本協会独自の手法でまとめていくことを考えております。どうぞ皆様楽なお気持ちでご参加くださいますように。

開催は2018年2月21日(水)18:30からを予定しております。